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単行本が売れて印税が一気に入った年、『そろそろ法人にした方が得なのかな』と考える漫画家さんは多いですよね。
結論から言うと、法人化の目安は「税率の差」だけでは決まりません。漫画家の場合、印税や原稿料に使える平均課税と比べてから決めるのが大事なんです。
この記事を読むと、漫画家ならではの法人化の判断ポイントと、税理士に試算を頼む時の準備が分かります。
漫画家が法人化する目安はどこにある?
漫画家の法人化の目安は、毎年の所得が安定して高い水準にあり、平均課税を使っても所得税の負担が重い状態が続く時です。印税が単発で増えた年だけで決めると、平均課税の方が有利なこともあります。税率、平均課税、社会保険の3つを並べて、税理士に試算してもらうのが近道です。
まず、税率の仕組みを見ておきましょう。
個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。国税庁の所得税の税率表では、課税所得が695万円以上で23%、900万円以上で33%、1,800万円以上で40%になります。
一方、資本金1億円以下の会社の法人税は、国税庁の法人税率の説明によると、所得の年800万円以下の部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です。
| 比べる点 | 個人の漫画家 | 会社にした場合 |
|---|---|---|
| 税の種類 | 所得税(累進課税) | 法人税+役員報酬に所得税 |
| 印税・原稿料の平均課税 | 要件を満たせば使える | 会社の所得には使えない |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社長1人でも健康保険・厚生年金 |
| 申告の手間 | 確定申告 | 決算と法人税の申告 |
この表を見ると『会社の方が税率が低いなら、すぐ法人にした方がいいのでは』と思うかもしれません。ただ、漫画家には個人ならではの有利な仕組みがあるんです。
印税の平均課税って、法人化とどう関係するの?
実は、漫画家の収入は税金の上で少し特別な扱いを受けられます。
国税庁の確定申告書等作成コーナーの説明では、印税や原稿料、作曲料などによる所得は「変動所得」とされています。年によって大きく増えたり減ったりする所得のことです。
変動所得には、平均課税という計算方法を選べる場合があります。何年かにならして税率を計算するイメージで、ヒット作が出た年の累進課税の負担を和らげる仕組みです。
使えるかどうかは、平均課税を選択できる方の条件で決まります。前々年と前年に変動所得がなかった人などは、その年の変動所得と臨時所得の合計が総所得金額の20%以上であることが条件です。
ここが大事なところです。平均課税は個人の所得税の仕組みなので、会社にして会社が印税を受け取るようになると、その所得には使えません。
例えば、連載がアニメ化されて単行本の印税が1年だけ大きく増えたケースを考えてみてください。この場合、法人にするより個人のまま平均課税を使った方が負担が軽いこともあります。
反対に、連載を複数抱えて毎年の収入が高い水準で続いているなら、平均課税の効果は小さくなりがちです。こうした方は、法人化を検討する意味が出てきます。

法人化で変わるお金と手続きは?
税率以外にも、会社にすると変わることがいくつかあります。
1つ目は社会保険です。日本年金機構の説明では、株式会社などの法人の事業所は、事業主のみの場合でも厚生年金保険・健康保険の適用事業所になります。アシスタントを雇っていなくても加入の手続きが要るんです。
2つ目は原稿料の源泉徴収です。出版社が個人に原稿料を払う時は、国税庁の説明のとおり、100万円以下の部分に10.21%、100万円を超える部分に20.42%の源泉徴収がされます。会社名義で受け取るようになった時の扱いは、契約の形で変わるので税理士に確認しておきましょう。
3つ目は出版社との契約名義です。連載や単行本の契約を個人のまま残すのか、会社に移すのかで、印税がどちらの収入になるかが変わります。著作権をどちらに置くかも含めて、法人化の前に話し合っておきたいところです。
4つ目は消費税です。国税庁の説明では、新しく作った会社は設立1期目と2期目に基準期間がないため、資本金1,000万円以上の場合などを除いて原則として納税義務が免除されます。ただ、インボイスの登録事業者になっている場合は消費税の申告が要るので、取引先との関係も含めて考えておきましょう。
| 漫画家の状況 | 向いている選択 |
|---|---|
| ヒット作で1年だけ印税が大きく増えた | 個人のまま平均課税を検討 |
| 連載が複数あり、毎年の所得が高い水準で続く | 法人化の試算を税理士に依頼 |
| アシスタントを複数雇って給与を払っている | 法人化と顧問契約をあわせて検討 |
| 収入が不安定で、まだ伸びるか分からない | 確定申告だけスポットで依頼 |
『アシスタントの給与計算まで自分でやるのは無理…』という方も多いはずです。人を雇うと源泉所得税の納付や年末調整もついてくるので、ここで税理士に頼むかどうかの判断が分かれます。
税理士に試算を頼む時は何を準備する?
漫画家の法人化は、税理士に数字で比べてもらうのが近道です。会社設立の流れや設立後の顧問契約については、会社設立の税理士の選び方と設立後の顧問契約で詳しく解説しています。
- 過去2〜3年分の確定申告書の控え
- 出版社ごとの支払調書や入金の記録
- 今後の連載・単行本の予定(分かる範囲で)
- アシスタントへの支払いの記録
- 仕事場の家賃や画材などの主な経費
過去の申告書を持っていくのは、平均課税が使えるかどうかが前年・前々年の変動所得で決まるからなんです。
相談の場では、こんなやり取りから始めると話が早いです。
「今年は印税が多かったんですが、法人にした方がいいですか?」
「まず平均課税を使った場合の所得税を出して、法人にした場合の税金と社会保険料と比べてみましょう」
費用の面では、税理士ドットコムが示す目安で、法人の顧問契約は年間売上1,000万円未満で毎月訪問なら月25,000円から、決算料が100,000円からとされています。民間の目安で、報酬は事務所ごとに自由に決まります。顧問料の決まり方は税理士の顧問料相場も参考にしてみてください。
設立の時に税理士に頼んで電子定款にすると、定款の印紙代4万円がかからない点もよく挙げられます。設立費用の内訳は会社設立の税理士費用の相場で確認できます。
印税が増えて確定申告が自分の手に負えなくなってきた、アシスタントを雇って給与の手続きが増えた、法人化するか今年中に決めたい、という方は、顧問税理士を探して試算から相談してみると判断がぐっと楽になります。
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よくある質問
漫画家は年収いくらで法人化すべきですか?
一律の金額はありません。所得税と法人税の税率差に加えて、平均課税が使えるか、社会保険料がどれだけ増えるかで結論が変わります。過去の申告書をもとに税理士に試算してもらうのが安心です。
法人化しても印税の平均課税は使えますか?
平均課税は個人の所得税の仕組みです。会社が印税を受け取るようにした場合、その会社の所得には使えません。個人に残す契約と会社に移す契約の分け方は、税理士に相談してみてください。
漫画家の法人化は税理士に頼まないとできませんか?
会社の設立登記そのものは自分でもできます。ただ、法人税の申告や役員報酬の決め方、契約名義の切り替えなど判断が多いので、少なくとも試算と最初の決算は税理士に頼む方が安心です。
まとめ
- 漫画家の法人化は、税率差だけでなく平均課税と社会保険料を並べて判断する
- 印税や原稿料は変動所得で、要件を満たせば平均課税を選べる
- 会社にすると、会社の所得に平均課税は使えない
- 1年だけ印税が増えた時は、個人のままの方が有利なこともある
- 試算には過去2〜3年分の申告書と今後の仕事の予定を持っていく




